晩年のカント
哲学者は精神の黄昏といかに向かい合ったか。
還暦を過ぎ、ようやく購入した自宅。いっさいの装飾を欠いた空間で、家族とのつきあいも絶ち、老哲学者カントは何を考えていたのか?
三批判書を書き上げ、名声を確かなものとした彼を襲った、ある筆禍事件とは?
同業の哲学者は一度として招待せず、連日四、五時間におよぶ食卓で繰り広げられる会話。女性や人種に対する高慢と偏見の集積。人の名前を覚えられなくなり、アルファベット順の引き出しをこしらえて会見に臨む姿。ケーニヒスベルク市内の年長の高齢者に対する異様な関心――。
ある老哲学者の、ぎこちない下手な生き方を辿る。
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