大政翼賛会への道 近衛新体制
打倒財閥、既成政党、そして軍閥、宮廷官僚を一掃して、すべての国家機構が一つの党の指導下に置かれる独裁を目指した近衛新体制運動。憲法改正と解釈改憲で、党の指導者が天皇に対する唯一の輔弼者となる構想は、どのようにして生まれたのか。開戦前夜、近衛文麿を担いだ様々な「革新派」の行動と実態を明らかにする名著。
ヨーロッパでの戦線が拡大し、開戦前夜の様相を帯びてきた昭和15年(1940年)、帝国憲法の改正やその弾力的な運用を含む政治・経済・社会体制の変革を目指す新体制運動が、左右の「革新派」を中心に巻き起こる。この無血革命ともいえる運動の中心は、その革新性と天皇に近い高貴な出自によって近衛文麿とされた。かつて次女・温子の結婚前日に自宅で催された仮装パーティーの際ヒトラーの仮装をしたという近衛は、自身の強者へのあこがれもあって、これを積極的に受け入れた。そして第二次近衛内閣成立後、近衛は内大臣を通じて意見書を天皇に提出。そこには、国防国家体制の必要から権力分立を謳った憲法の改正や時代の進運に応じた運用を訴え、執行権力の集中、および東亜新秩序追求の世界史的意義と統制経済の確立が強調されていた。近衛を担いだ新体制論者の多くは、打倒すべきは財閥を中心にして、その政治的代弁者である既成政党であり、彼らの輩下にある旧官僚であり、新しい状況を認識しない軍官僚=軍閥であり、天皇をとりまく宮廷官僚である、という共通認識をもっていた。すべての国家機構が一つの党の指導下におかれ、その最高指導者は天皇に対する唯一の輔弼者となるという構想のもとに展開した運動は、大政翼賛会を発足させる。その一部始終から、開戦に突入していく日本の政界、財界、官界から軍部、労働運動指導者など各層の思惑と行動を分析する名著。
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