ローマ五賢帝 「輝ける世紀」の虚像と実像
ネルウァからマルクス・アウレリウスまで5人の「賢帝」が続いた約100年間は、ローマ帝国の最盛期とされ、「人類が最も幸福だった時代」と呼ばれる。しかし、たとえばハドリアヌス帝は、同時代の人々には非常に憎まれた暴君だった。また、賢帝を輩出した「養子皇帝制」も、かえってそのために水面下での激しい権力闘争を生じさせていたのである。繁栄の陰の部分を描きつつ、この時代が最盛期であった理由を解明する。
紀元96年に即位したネルウァ帝に始まり、トラヤヌス、ハドリアヌス、アントニヌス・ピウス、マルクス・アウレリウスの5人の「賢帝」が続いた約100年間は、ローマ帝国の最盛期とされ、イギリスの歴史家ギボンにより「人類が最も幸福だった時代」と呼ばれる。
しかし、たとえばハドリアヌスは、同時代の人々には非常に恐れられ、憎まれた「暴君」だった。また、有徳の「賢帝」を輩出した麗しい制度とされる「養子皇帝制」も、実子にたまたま恵まれなかったことから採用された場当たり的な制度であり、かえってそのために水面下での激しい権力闘争を生じさせてもいた。
著者は、こうした「輝かしい時代」の陰の部分にこそ、この時代が最盛期であった理由を解き明かす秘密がある、という。そして、碑文などの文献史料を手掛かりにして、歴史上の人物の経歴や職歴、親族関係、宗教などの個人情報を詳細に分析する「プロソポグラフィー的研究」により、明るい「平和な時代」のイメージとは相容れない、皇帝と元老たちをはじめとした帝国の政治エリートたちの暗闘を解き明かしていく。1998年刊の講談社現代新書の文庫化。
書店によって取り扱いがない場合もございますので、あらかじめご了承ください。電子書籍での価格は紙の本と異なる場合がありますので、詳しくは各電子書店でご覧ください。