岩波茂雄と出版文化 近代日本の教養主義
岩波茂雄が起こした岩波書店の興隆は、「学歴貴族」の栄光の時代に呼応しています。近代日本のアカデミズムは外来で急ごしらえであり、「前衛」という言葉で操作可能だと見抜いていたのが、岩波茂雄であり、日本のインテリの底の浅さを見抜いています。教育社会学者の竹内洋氏は、日本のアカデミズムのありようと出版産業の構造を、問い直し、解明します。一冊で二冊分の内容を持っています。
本書は、岩波書店の創業者である岩波茂雄をめぐる分析『岩波茂雄 成らざりしカルテと若干の付箋』(村上一郎著)と、解説(竹内洋)からからなります。
信州人である岩波茂雄はいかにして出版社を起こし、出版界を牛耳っていくようになったのか? その過程で何を利用し、何を切り捨てたのか? 「岩波文化」と呼ばれる一大潮流を作り上げ、日本の教養主義を牽引したが、そこに問題はなかったのか?
おりしも、岩波書店の興隆は、近代日本の「学歴貴族」の栄光の時代に呼応しています。近代日本のアカデミズムは外来で急ごしらえのところがあり、しっかりと熟成されたものではなく、見せかけの「前衛」で乗っ取ることが可能だと見抜いていたのが、岩波茂雄であると村上一郎は述べます。そして、日本のインテリゲンチャのあり方の底の浅さを見抜いています。
教育社会学者の竹内洋氏は、日本のアカデミズムのありようと教養主義の盛衰、そして出版業というものが、文化産業としてどのような構造を持つのかを、『岩波茂雄』を土台に据えて、問い直し、解明していく、一冊で二冊分の内容を持つ本です。
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