永楽帝――華夷秩序の完成
簒奪、殺戮、歴史の捏造……。
その果てに築きあげた、中華の〈世界システム〉。
明朝第三代、永楽帝。甥である建文帝から皇位を簒奪し、執拗なまでに粛清と殺戮を繰り返し、歴史を書き換えて政敵が存在した事実まで消し去ろうとした破格の皇帝。
その執念と権勢はとどまるところを知らず、中華の威光のもと朝貢国六〇余をかぞえる「華夷秩序」を築き上げた。
それは前近代東アジアを律しつづけた中華の〈世界システム〉であった。
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――彼の確立した体制は、中国国内ばかりか東アジア諸国でも、「近代」以前の社会を規定した。良きにつけ悪しきにつけ、中国の影響を受けつづけた周辺諸国は、彼の時に明朝を中心とした国際秩序に組み込まれ、その枠組みのなかでの行動を強いられた。(……)東アジアの国際関係を律するシステムの完成は、永楽時代にある。――<本書「あとがき」より>
※本書の原本は、1997年、小社より刊行されました。
【本書の内容】
はじめに
第一章 中華という名の世界
1 中華と夷狄
2 中華世界の変転
第二章 大明帝国の誕生
1 中華の回復
2 元から明へ
3 明初体制の意味するもの
第三章 皇統のゆくえ
1 燕王の事蹟
2 暗闘
第四章 奪権への階梯
1 南人朝廷
2 挙兵前夜
第五章 歴史の翻転
1 靖難の変
2 理念の末路
第六章 失われた時のなかで
1 建文出亡
2 滅びゆく者たち
第七章 天命の所在
1 聖王の御代
2 徳治の実態
第八章 クビライを越えて
1 四夷朝貢
2 拡大する中華
第九章 華夷秩序を統べる者
1 順逆の理
2 天子の都
第十章 永楽帝の遺産
1 盛世の翳り
2 中国史の転換点
参考文献
あとがき
文庫版あとがき
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