月夜の記憶

著:吉村 昭
定価:1,650円(本体1,500円)

人間の根柢へ、文学の原理へ、深まりゆく作家精神の軌跡!
死を賭して受けた胸部手術、病室から見た月、隣室の線香の匂い、そして人間の業……。終戦からほどない、21歳の夏の一夜を描いた表題作をはじめ、人間の生と死を見据え、事実に肉迫する吉村昭の文学の原点を鮮やかに示す随筆集。自らの戦争体験、肉親の死、文学修業時代と愛する文学作品、旅と酒について、そして家族のことなど、ときに厳しく、ときにユーモラスに綴る。
◎秋山駿ーーこの随筆集は、何を果したのか。読んでいるうちに、わたしは面白いことに気が付いた。かなり以前からわたしは、日本ではあれほど「私小説」が全盛であったのに、なぜ「私哲学」といったものがそれほど出現しないのか、疑問に思っていた。この「随筆」は、数々の優れた長篇小説と対比して言うのだが、吉村さんの「私哲学」だったのではあるまいか。これが、急所だ。(中略)作家吉村昭の全身像が現われる。だから、この随筆集こそ、吉村さんの代表作といっていいものであろう。<「解説」より>

月夜の記憶

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