夏の栞―中野重治をおくる―
文学的友情で支え合った中野重治との永遠の別れ。熱く深い思いで綴る感動の名作。ーー1979年8月、作家中野重治が逝去した。中野重治に小説家として見出された佐多稲子は、この入院と臨終に至るまでの事実を、心をこめて描いた。そして50年にわたる、中野重治との緊密な交友、戦前、戦中、戦後と、強いきずなで結ばれた文学者同士の時間を、熱く、見事に表現した、死者に対する鎮魂の書。毎日芸術賞・朝日賞を受賞した、感動の文学作品。※本書は、新潮文庫『夏の栞―中野重治をおくる―』(1989年)を底本として使用いたしました。
〇山城むつみ 佐多稲子はこの世界の誰よりも先に、佐多自身よりも先に中野にとって小説家だったのだ。中野を前にする彼女は何よりもまず小説家でなければならなかったはずである。そんな彼女が中野に向き直って中野を追悼するエッセイ、というよりもすぐれた批評文はすべて追悼文であるという意味での追悼文を書いてそれが小説になっても不思議はないのだ。中野が佐多のなかに見出したのは「小説家」であって「1人の女」ではなかった。――<「解説」より>
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