試みの岸

著:小川 国夫
定価:1,870円(本体1,700円)

馬喰・十吉は、海への憧れを一艘の貨物船に託した。一族の悲劇はそこに始まる。甥の余一は、崖から落ちる十吉の愛馬アオに変身し、港町で従姉・佐枝子が自死したという噂を耳にした。駿河湾西岸地方を舞台に、運命に試される純粋な人間の行為を「光と影」の綾なす世界に、鮮やかに刻印する3部作。


強烈な光が自然の原型と人間の行為を焙りだす。

馬喰・十吉は、海への憧れを一艘の貨物船に託した。一族の悲劇はそこに始まる。甥の余一は、崖から落ちる十吉の愛馬アオに変身し、港町で従姉・佐枝子が自死したという噂を耳にした。駿河湾西岸地方を舞台に、運命に試される純粋な人間の行為を「光と影」の綾なす世界に、鮮やかに刻印する3部作。力強いデッサンによって、海・波・光など自然の原型を焙りだし、重苦しい生の課題を問う小川文学の達成。

長谷川郁夫
そして、思い出す。22歳の私を出版の道へと駆り立ててくれたものが、復刊「アポロンの島」(昭和42年)の透明な光と、44年4月号の「黒馬に新しい日を」(「文學界」)にはじまる「試みの岸」3部作、そして「展望」44年11月号に載った「或る聖書」の3作であったことを。日本の小説言語によって、メタフィジカルな光景が鮮烈な視覚的イメージを伴って描き出されたことに感動した。文学の可能性が無限であることを確信したのだった。――<「解説」より>

※本書は、小沢書店刊『小川国夫全集』第3巻(1992年1月)を底本としました。

試みの岸

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