壺坂幻想

著:水上 勉
定価 : 本体1,300円(税別)

盲目で死んだ祖母への鎮魂に、作家は壺坂寺に詣でた。山道を辿ると、みかん水を売って祖母を大切にした叔父の悲運、生きている母の姿など、親族の誰彼もの不幸が思い浮かんでくるのであった……。『雁の寺』『越前竹人形』『飢餓海峡』の著者が、作家生活20年にして初めて、書かずにはいられないテーマに突き当たった。水上文学晩年の陰翳に満ちた豊かな文学世界の到来を約束する、家族を巡る追想の連作短篇集。生きるとは、私とは、何か?
〇高橋英夫 「クスリ」だか毒だかを口に含んだことのある水上勉はやがて作家となり、いくつもの私小説を書いた。自分自身のこと、周辺の人々のことを書き、人間の生と死を表現した。(中略)毒のようでもあるが「クスリ」でもあるほおずき、それがつまりは私であり、私小説でもあるのだろう。水上勉を読んだ読者は、生きることの何か、私の何かが、見えない層となって自分の心身のなかに積もってゆくという経験をしたのである。――<「解説」より>

壺坂幻想

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