新装版 おんなみち(上)

著:平岩 弓枝
定価:847円(本体770円)

明治22年、秋。東海道線で1人東京に出た世津は、静岡随一の格式と規模を誇る茶商・清華堂の箱入り娘であった。親の決めた許嫁を捨て、出入りの茶園の末息子・信吉とかけおちし、約束の宿で落ち合うはずだったが……。運命に翻弄され、求め合いながらもすれ違う2人の生きる道を哀切に描く長編ロマン。


俺といっしょに逃げてくれ・・・
初恋の熱情のままに家を飛び出した世津と信吉。だが運命は2人を引き裂く。

明治22年、秋。東海道線で1人東京に出た世津は、静岡随一の格式と規模を誇る茶商・清華堂の箱入り娘であった。親の決めた許嫁を捨て、出入りの茶園の末息子・信吉とかけおちし、約束の宿で落ち合うはずだったが……。運命に翻弄され、求め合いながらもすれ違う2人の生きる道を哀切に描く長編ロマン。

うつむいた世津の膝に、はらはらと涙がこぼれた。信吉もまた、泣いていた。
「お世津さん……」
思いつめた声であった。
「俺と一緒に逃げてくれ……」
「え……? 」
「なにもかも、やり直しだ……俺は、どうしても、お世津さんがあきらめきれない……逃げてくれ……俺といっしょに静岡をはなれて……知らない土地へ行って暮そう……な、お世津さん……」
「信さん……」
信吉にとられた手を、世津は自分の膝の上から動かすまいした。世津の動悸が早くなった。――<本文より>

新装版 おんなみち(上)

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