海霧(下)
隆盛をきわめた平出商店の悩みの種は、跡継ぎの娘リツと婿の修二郎の不仲であった。が、無事に孫も生まれ、順調に思えた一族にも、容赦のない時代の波は、押し寄せてきた。日露戦争、震災、愛する人の死、そして老い……。昭和を孫の千鶴(ちづ)と生きるおさよの胸には、いつも、あの北の海の、「深い霧」があった。
時代の波の中で人々が得たものと失ったものは。
隆盛をきわめた平出商店の悩みの種は、跡継ぎの娘リツと婿の修二郎の不仲であった。が、無事に孫も生まれ、順調に思えた一族にも、容赦のない時代の波は、押し寄せてきた。日露戦争、震災、愛する人の死、そして老い・・・。昭和を孫の千鶴(ちづ)と生きるおさよの胸には、いつも、あの北の海の、「深い霧」があった。
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