零戦 搭乗員たちが見つめた太平洋戦争
「昭和十五年、第十二航空隊に属して戦ったときは、私のいた十ヵ月の間に、搭乗員の戦死者は一人も出ませんでした。十七年八月から十八年にかけ、ソロモンで戦った第二航空隊は、補充を繰り返しながら一年で壊滅、しかし一年はもちました。
ところが、十九年六月に硫黄島に進出した二五二空は、たった三日の空戦で全滅しました。続いて十月、再編制して臨んだ台湾沖航空戦では、戦いらしい戦いもできなかった。
そんな流れで戦った搭乗員の立場からすると、フィリピンでの特攻というのは、ある意味、もうこうなったらやむを得ないと納得できる部分がありました」
こう語るのは、中国大陸での零戦初空戦の頃から熟練の搭乗員として活躍し、終戦の日、特攻出撃を待機していた角田和男さん。この戦争を通じて、零戦がどのような存在であったかを端的に表す証言である。
著者の神立氏、大島氏は、晩年を迎えた、最前線で戦った多くの搭乗員たちの肉声を聞くことができた。それゆえ、本書では、初空戦では、撃墜27機、損害0機で圧勝した、惨敗と言われたミッドウェイ海戦で搭乗員の戦死者は米軍の方が圧倒的に多かった、ラバウルで活躍した二〇四空の零戦搭乗員は、75%が戦死しているのに対し、特攻専門部隊として編制された二〇五空の戦死者は34%であるなど、これまで語られてきたイメージを覆す、太平洋戦争の生々しい実像が描かれている。
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