著:三木 卓
定価:1,650円(本体1,500円)

1959年、〈ぼく〉は詩の同人誌で〈K〉と出会った。ふたりは結婚し、一児をなしたが、詩人としてのプライドが強すぎた〈K〉の言動は常軌を逸しはじめ、〈ぼく〉は困惑する。ふたりの生活は、すれ違い、やがて別居へと至る……。ただ、この奇妙な生活にも、「夫婦愛」は紛れもなく存在していた!


なぜ、こんなにも心にしみるのだろう……。

逝ってしまった妻・Kへの想い。
半世紀に及ぶある夫婦の物語。

円満とはいえなかった夫婦生活を、優しさとユーモアに溢れた眼差しで振り返るとき、そこにはかけがえのない「愛」と呼べるものがあった――。

Kは自分勝手でわがままで、心がせまくて、他人をおそれることはなはだしく、内に対しては横暴なやつだった。そんなやつのために、なんで泣いてやらなくてはならないのか。おまえはどうかしている。
「Kが……いたましい」
ぼくはやっといった。(略)そしてハンバーグを一きれ、また口の中に入れて、冷えたビールで流しこむと、ふたたびどっと涙があふれた。――<本文より>

K

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