がんを生きる子 ある家族と小児がんの終わりなき闘い
二度のがん、放射線治療、そして、体に刻まれた後遺症。親は、子は、くり返される試練をどう乗り越えたのか? ある日、突然子どもに襲いかかり、家族を恐怖の極限にまで追いやる「小児がん」。患者と医師の両方の視点で闘病の全過程を見つめ直し、子どもの命をめぐる真の闘病の姿を浮かび上がらせる。小児がんに挑み続けた家族の闘いと再生を主治医が描く渾身のノンフィクション。
娘・優希の「がん」に挑み続けた家族の闘いと再生を主治医が描く渾身のノンフィクション
「ゆうちゃん、どうか明日の朝まで生きていて……」
二度のがん、放射線治療、そして――体に刻まれた後遺症。
親は、子は、くり返される試練をどう乗り越えたのか?
生存確率20%――命の代償は「左足」
優希の左足は硬く伸び、膝も足首も石膏で固められたようにまがることがない。
そして、明らかに右足より細く短い。
この障害はがんの治療の過程で人為的につくられたものだ。
そして、元には戻せない障害を刻みこんだ人間は、私だった。
(プロローグより)
「生存の可能性は、二十%くらいと思って下さい」
夫婦は表情を強ばらせたが、何も言わなかった。再び静まりかえった部屋の中で、父親が尋ねた。
「いつからですか? 治療を始めるのは」「明後日です。よろしいですか?」「分かりました。よろしくお願いします」
二人は言葉を噛みしめて、堪えている、そんなふうに私には感じられた。――<本文より>
書店によって取り扱いがない場合もございますので、あらかじめご了承ください。電子書籍での価格は紙の本と異なる場合がありますので、詳しくは各電子書店でご覧ください。