猫の水につかるカエル
静かなユーモア・優しいペーソス、淡々と沁みる小説集。「父母の、友の、猫の、己の死を深く見つめる作者の眼差しが、今ここにあるかけがえのない生に向けられる時、すべての事物が記憶を語りはじめる――。
静かなユーモア・優しいペーソス・淡々と沁みる・小説集
「父母の、友の、猫の、己の死を深く見つめる作者の眼差しが、今ここにあるかけがえのない生に向けられる時、すべての事物が記憶を語りはじめる――。
静かなユーモア。優しいペーソス。
小説家・川崎徹の充実一途を示してやまない、これは生きとし生けるものへの優しい“死者の書”なのである。」――豊崎由美氏
どんな悪天候でも猫たちは待っている。濡れない、風のあたらぬ場所に体を押し入れ、全身が入らなければ頭だけでも突っ込んで待っている。わたしが現れると小さく鳴いて、自分の居場所を教える。「おじさん、ここ、ここ」と。だからわたしは雨でも雪でも休むわけにはいかないのだ。世話を続けるうちにそう思い込んでしまった。誰に強いられたのでもなかった。風雨をしのいで待つ彼等の姿を案じて気をもむより、行ってしまった方が楽なのだ。――<本文より>
収録作品
「傘と長靴」
「猫の水につかるカエル」
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