石を置き、花を添える
ウォーキング途中の道端に置かれた石と、添えられた花。埋められている「なにか」――問いは残されたまま「わたし」の記録は記憶を辿り、老いと死への思索に漂う。清冽なる本格小説集。
ウォーキング途中の道端に置かれた石と、添えられた花。埋められている「なにか」――問いは残されたまま「わたし」の記録は記憶を辿り、老いと死への思索に漂う。
清冽なる本格小説集。
いなくなった人間の生前の姿を見て、懐しんだり偲ぶことを、自分がしないことは分かっていた。ひとりで見てしんみりするのは本意ではなく、何人かで懐しむのは、さらに本意ではなかった。……おそらくわたしは、何事にせよ懐しむことが好きではないのだ。懐しむことは対象の原形を歪め、歪めなければ人は懐しめない、そう考えていたのだと思う。――<本文より>
収録作品
「石を置き、花を添える」
「なんの変哲もない場所にすぎない、タンスの上」
「海近しの眩しい陽射しが」
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