孟嘗君(1)

著:宮城谷 昌光
定価:1,708円(本体1,553円)

1本の槐(えんじゅ)の樹からすべては始まり、函谷関(かんこくかん)に至る!青年風洪の光と夢に祝された華麗なる物語世界。

青欄はこの月のはじめに男子を産んだ。そのとき田嬰は不在であり、10日ほどして帰ってくると、わが子の誕生を大いに喜び、青欄をねぎらい、この男子に文という名をあたえた。ところが数日後に、荒々しい足どりで青欄の部屋をおとずれた田嬰は、恐ろしい形相で、「何日に生まれた」と、念をおすように問うた。青欄はおびえがちに、「5日でございます」と、こたえた。「5月5日の子か。やはりな」田嬰は吐きすてるようにいうと、自分の子をひとにらみして、青欄のほうへ目をもどし、「殺せ」と、低い声でいった。──本文から

孟嘗君(1)

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