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安倍首相の「歴史観」を問う

昭和20年8月14日の日本を上空から偵察した米軍は驚いたという。降伏が決定し、爆撃を控えたにもかかわらず、日本各地で炎が舞い上がっている。その理由は後から知ることになるが、軍部の命令により戦争史料が徹底的に焼却されていたのである。もちろん、敗戦後に問われる戦争指導の責任追及をかわすためである。
昭和史の実証的研究のため、残された史料を発掘し、延べ4000人の人々から直接聞き書きを行ってきた筆者にとり、近年目につく事実を歪曲・曲解し、自分たちの立場に都合の良いように歴史解釈を図る、いわゆる歴史修正主義の動きはゆゆしき事態である。これまで重ねられてきた歴史学者・研究者の成果と誇りを傷つける動きと言ってもいい。
そのなかで特に危惧しなければならないのが、歴史修正主義者たちが権力と一体化している風潮である。8月に発表される安倍首相の「談話」には、歴史研究から得られた教訓が活かされるのか。世界的に注目を集めるそのステイトメントを前に、昭和史研究の第一人者があえて首相の立ち位置に異を唱える。
また、従軍慰安婦問題で指弾された朝日新聞の、第三者委員会のメンバーとして同問題の報道を目の当たりにしてきた筆者が、報告書には盛り込めなかった慰安婦問題の本質を書き下ろす。「軍隊と性」「戦場と性」の問題にも深く言及する。