食うや食わずの苦学生、堀内と沢田。様々なアルバイトの末に、意にそわぬ選挙活動を手伝うことに……。敗戦後の闇市を舞台に、混沌たる世相とそこで生きぬく若い世代を、濃密な文体で描破した「なまけもの」、企業の空しい宣伝合戦の顛末記「巨人と玩具」等、小説3篇に、東京の街のスケッチ、ヴェトナム戦争をめぐるエッセイを併録。リアリズムの新たな可能性を拓いた<行動する作家>の初期作品を精選。
大岡玲
開高健の作品が持っている堅固な構造性と言葉の乱舞は、もやもやして捕捉しにくい思念の塊としてではなく、たとえば疾走するレースカーのごとく、あるいは格闘するK-1の選手の肉体のごとく、きわめて具体的に私を撃ったのだ。日本近代文学の歴史においては、こうした過剰な具体性はきわめて珍しいものだといえる。そして、もちろん、作者である開高健は、きわめて意識的にこの方法論を選択したのだ。――<「解説」より>
+ もっとみる