現代文学の可能性を拓く
彦根藩2代目藩主の生母・春光院の弟、青春時代には江戸の噂になるほどの艶名を売り、やがて隠棲、僧侶としても文筆家としても一代の名声を担った元政上人。彼の清冽な詩の世界に遊び、事蹟を訪ねる旅に出ようとした「私」は、父への憎しみを跡付けるための旅をする1人の国際女優と同道することに。幸と不幸の間で揺れ続ける2つの旅の終着は……。現代文学の可能性を拓く詩的で知的な冒険。
鈴木貞美
われわれは、この長篇小説に、20世紀日本が生んだ、この稀有な文人(オム・ド・レットル)の中で20世紀のヨーロッパと日本、平安時代の王朝文化と徳川時代の文化が、どのようなつながりをもちながら並存し、旺盛な関心を呼び起こしていたのかを、読みとることになるだろう。――<「解説」より>
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