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あとがきのあとがき

『奇蹟審問官アーサー
 死蝶天国』

柄刀一 (つかとうはじめ)

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1998年『3000年の密室』でデビュー。近著に『ペガサスと一角獣薬局』『時を巡る肖像』『黄昏たゆたい美術館』などがある。

 ミステリーの探偵役としてのアーサーの役目は、奇蹟と見えた現象を現実に戻すことではなく、解決してなお、人知では至れないのかもしれないものを垣間見せることだ。

 ピラミッドやナスカの地上絵が人々をワクワクと引きつけ続けるのは、垣間見える・もしや・があるからだろう。

 収録作「バグズ・ヘブン」では特に、論理的解決の外側に眼目があるという点が顕著で、密室トリックなどは重要ではなく、ラスト一行が再び構築する神秘や、犯人が密室にこだわった動機を巡る何重ものアイロニーなどを、読者が思考遊戯の道具にしてくれればと思う。

 第二話も、奇蹟と出合ったと信じた者の心理を巡る物語となっている。

 ダイイング・メッセージの反転スタイルを意図した書き下ろしの第四話は、特に女性読者から、「不思議な余韻を味わった」という好意的な反応が多く寄せられた。まずまずは効果的だったのかもしれない。

 以上の収録作はどれも、舞台こそ世界各地様々だが、宗教観というか、奇蹟観を照射する観念的演出に少なからず彩られているので、第三話「聖なるアンデッド」は趣向を変え、冒険アクション調を強くしてみた。

 作中に登場する、首から血を流し続けるやせ細った〈ゾンビ〉は、執筆している過程で思いついたもので、ストーリーにうまくはまってくれたと思う。

 注でも記してあるが、こうした地下神殿にクスリを用いた信徒たちを誘導するということは、かつて実際に行なわれており、大舞台を鮮烈に利用した人心操作や統治方法には驚嘆する。

 最近、こうしたスケールの刺激をよく受け続けた結果だろうか、新シリーズの発想がわいた。コンセプトは、それこそピラミッドではないが、“挑むべき謎は地球そのものだ!”――。

 大風呂敷に見合う作品、ぜひとも形にしたい。

 また、『サタンの僧院』に登場したアーサーの弟を覚えていてくださって、今回姿のないことを気にした読者もいたようだが、アーサーの長編を書くような機会があれば再登場願うかもしれない。

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