低温「ふしぎ現象」小事典

編:低温工学・超電導学会
定価:990円(本体900円)

凍った魚が蘇る「生体冷凍保存術」。最高の美味を極める「冷凍と解凍の科学」。本当は恐ろしい「低体温症」の話。無風なのに真横に煙がたなびく南極大陸の怪奇。ダークマターを捉える超ヘビー級の低温液体。電気抵抗がゼロになる「超電導」や、壁を這い上がる忍者液体「超流動」。氷点下をはるかに下回る世界で、なぜ「ふしぎ現象」が生じるのか、低温技術で何ができるかを網羅した「温度別」読む事典。


「温度の底」に向かうエレベーターに乗って

 私たちがふだん生活している環境の温度は、「室温」と呼ばれています。寒い日も暑い日もありますが、絶対温度(ケルビン=K)という単位できりのいい300K程度、すなわち約27℃あたりを指す言葉です。
 0℃で水が氷になることは、みなさんご存じのとおりです。ところが、氷点下を超えてどんどん温度を下げていくと、室温ではまずお目にかかることのできない「ふしぎ現象」が続々と姿を現します。いったい何が起こるのでしょうか? 極めて低い温度に到達するには、どんな技術が必要でしょうか? 果たして「温度の底」は存在するのでしょうか?
 この本は、私たちが生活している温度から出発して低温の世界を探求する、好奇心あふれる旅への案内書です。みなさんは今、室温から温度の底へと向かうエレベーターに乗っていると想像してください。外の温度が下がっても凍りつくことのないように、エレベーターの壁面は断熱ガラス張りになっていますので、どうぞご安心を。私たちは、エレベーターが下がっていくそれぞれの温度で、ふしぎで面白い現象を見ることができます。
 0℃(273K)から少し下がったあたりでは、一度凍った魚が生き返って泳ぎ出しています。音を使って温度を下げている人の姿もありますね。
 この地球上で自然に得られる最も低い温度はマイナス89℃(184K)、極寒の大陸・南極で経験できます。南極では、コップのお湯を空中にまくと、瞬時に氷の花火が咲きます。
 エレベーターがさらに下がっていくと、周囲の空気が冷えて液体へと変化します。温度はマイナス183℃(90K)。電気抵抗がゼロになる「超電導」現象が生じています。
 2・177K、実にマイナス273℃以下という低温では、奇妙な液体ヘリウムの世界が登場します。忍者のように壁を這い上がり、わずかな隙間をもすり抜ける超流動液体です。極低温ならではの、超電導磁石を駆使する高エネルギー物理学者、あるいは宇宙からの赤外線天体観測を行う人たちにも出会うことでしょう。
「温度の底」へと向かうエレベーターは、果たして目標の地点に到達できるのでしょうか?

低温「ふしぎ現象」小事典

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