ふくろう

著:梶 よう子
定価:1,650円(本体1,500円)

西丸書院番士に抜擢された伴鍋次郎は、町で会った初対面の老武士に「許してくれ」と土下座され不審に思う。その後さらに、自分の名前が記された位牌と、父の昔の日記を見つけ、自分が生まれたころの記述だけが欠落していることがわかる。自分は養子だったのだ。ほかにも自分の出生に関して何か秘密があるにちがいない。鍋次郎は義父のもとを訪ね、本当の父親「松平外記」の名を知る。外記は城中で刃傷沙汰を起こした人物だった。


伴鍋次郎は西丸書院番士に引き立てられるが、両親は喜ぶどころか狼狽し、不安すら覗かせる。町で会った老武士には、初対面にもかかわらず「許してくれ」と土下座される始末。自分はいったい誰なのか? しばらくして、同じ老武士にこんどは橋の上で遭遇する。酔いつぶれかけていた老人は、鍋次郎の姿を認めるや否や何事かを叫んで橋から飛び降りてしまう。老人の名が「神尾五郎」ということまではわかるが、不審は募るばかり。そんな矢先、家で書物の整理をしていると、「鍋次郎」と記された自分の名前の位牌と、父の昔の日記を見つける。日記には、鍋次郎が生まれたころの記述だけが欠落していた。自分は養子だったのだ。ほかにも自分の出生に関して何か秘密があるにちがいない。意を決した鍋次郎は、義父の高萩惣吾のもとを訪ねる。疑念をぶつけた鍋次郎に、惣吾は鍋次郎の本当の父親「松平外記」の名を告げる。外記は惣吾の親友だったという。惣吾の口から、松平外記の時を超えた悲しい物語が始まった。

ふくろう

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