講談社BOOK倶楽部

あらすじ――極悪人も本当に救われるのか?! 純愛、冒険、陰謀、裏切り、祈り― すべてがぎゅっと詰まった、手に汗握る物語。

これまでの親鸞

第一部『親鸞』の内容

 動乱の京都で、下級官人の日野家に生まれた忠範は、伯父の家に引き取られて幼少期をすごす。鴨の河原では、河原坊浄寛、法螺房弁才ら下々の者たちと交わる。9歳にして、慈円阿闍梨のもと白河房に入室、範宴と名乗り、3年後には比叡山の横川に入山して修行に励む。7年が過ぎる。慈円の指示で範宴は吉水へ向かい、法然上人の説法にはじめて接する。さらに10年の修行ののち、六角堂で紫野という女性との運命の出会いを果たす。そしてついに範宴は山を降りることを決意、法然の門下となりのちに綽空と名乗る。新たな生活のなかで、恵信と名を変えた紫野と再会し妻に迎える。それから数年にして、『選択本願念仏集』の書写を許されるまでに法然に認められ、善信の名をもらう。だが、貴族社会をも巻きこんだ法然の教えは、やがて念仏禁制の裁きを受け、師は讃岐へ、善信は越後へ追放となる。恵信の故郷の地へ。出発に先立ち親鸞と名を改め、恵信をともない旅立った。

第二部『親鸞 激動篇』の内容

 京の都を追放された親鸞は、妻・恵信の故郷でもある越後に流された。その地で、地元の民に崇められ生き仏を称する外道院の行列に出くわし、貧者、病者、弱者が連なる光景に衝撃を受ける。文字を知らぬ田舎の人びとに念仏の心を伝えよとの、法然上人の言葉が親鸞の脳裡に去来する。依頼された雨乞いの法会をやりぬいた親鸞は、恵信らと平和な日々を迎えていた。人びとの期待と法然の教えとの間で悩みながらも施療所を開設し、多くの相談を受けた。やがて長男と次男を得、さらに法然上人が許されたという吉報に接するが、帰洛をためらううちに上人の訃報が届く。「わたしは独りになった。自分自身の念仏をきわめなければならない」。そんな折、新たな決意をした親鸞に関東から誘いがかかる。やがて常陸国・稲田の草庵に移り住み、道場で武士をはじめさまざまな身分の人びとに説法をつづける親鸞。唯円や明法房らの弟子を得、関東に来て20年近くが経とうとしていた。

第三部『親鸞 完結篇』の内容

再び立った都の地では、陰謀が渦巻いていた。
信心と家族愛の間で揺れ動く、人間親鸞の生涯とは!

帰洛して9年が過ぎた。親鸞は西洞院で長男の善鸞らと暮らしていた。事件が起きる。船岡山の怪僧・覚蓮坊が、善鸞をそそのかして親鸞が手掛けていた『教行信証』を盗み出そうとしたのだ。だが、白河印地の党の活躍で覚蓮坊は敗れ、なんとか書を取り戻すことができる。さらに10年が過ぎたころ、親鸞を説き伏せて、善鸞一家が東国へと旅立った。唱導によって当初は成功を収めるものの、親鸞面授の弟子たちとの軋轢を生み、親鸞を悩ませる。他方、都では、女借上・竜夫人が建立した遵念寺の落慶法要が営まれようとしていた。そこへ覚蓮坊と検非違使が突如現れ、居合わせた親鸞と竜夫人を連行しようとするが!?