「21世紀の名作アニメ」
先日、NHKで『獣の奏者エリン』の記者発表が行なわれました。
立ち見が出るほどたくさんの記者さんたちが来てくださっていた会場の、大きなスクリーンで、第一回の放映を見たのですが、スキマスイッチが歌う「雫」(これが名曲!!)とともに動いていくオープニングの映像を見ているだけでもう、ぎゅっと胸をしめつけられてしまいました。
デザイン化された絵本のような色彩の映像と、リアルな母娘のうごき、そして、光を弾いて天を舞う王獣……!
このオープニング(そして、Cossamiが唄う可愛い歌とともに動くエンディング)には、『獣の奏者エリン』というアニメをどう創ろうとしているか、その心意気がよく表われていて、私は本当に好きです。
記者会見で私は、このアニメを「21世紀のハイジ」を目指したと言いましたけれど、その言葉の裏には、けっこう、さまざまな思いがこめられているのです。
『獣の奏者』を読んでくださった方なら、この物語が、どれほどハードで、厳しいものを秘めているか、ご存知だと思います。
その一方で、『獣の奏者』は、重く厳しいだけの話ではなくて、陽だまりの花畑のような明るさと、のんびりとした暮らしの匂いもある物語です。
しかも、主人公は10歳から14歳、そして大人へと成長していきます。
明るさと重さ、単純さと複雑さ、子どもの物語と大人の物語……そんなニ面性をもっているこの物語を、両方を大切にしながら、しかも、子どもにも楽しんでもらえるアニメにするには、いったい、どうしたらいいのだろう?
それを、浜名監督や藤咲さんたちと話し合って、出た答えが、「21世紀の名作アニメ」だったのです。
「名作アニメ」って、なんでしょう?
私は、それを「日々を暮らしていく子どもたちの目から見える世界を、たんねんに描いたアニメ」じゃないかな、と思っています。
ハイジ、ムーミン(あれも、一応、トロールの子ども?)、マルコ、ラスカル、コナン、宝島、そして、ホルス……私が子どもの頃に愛していた「名作アニメ」はみんな、子どもの目から、世界が描かれていました。
だからといって、単純だったなんてことはなくて、実に豊かで、わくわくするような、波乱万丈の物語が展開していくわけですが、それでも、「視線」がちゃんと主人公の目から描かれていたので、子どもの私でも、ドラマがどんなに複雑になっても、手に汗握りながら、ついていけたのです。
よーし、これだ! ということになって、まず始めたのが物語の解体作業(笑)でした。10歳の頃のエリンにとって、お母さんとの暮らしや、闘蛇や、ほかの大人たちがどう見えたのか、ひとつひとつ丹念に物語にして描いていけば、きっと、子どもたちも、エリンの気もちになって追いかけてくれる。
そうやって描いていけば、エリンが14歳になっても、19歳になっても、物語が、どんどん複雑になっていっても、子どもたちが置いてけぼりになることはないでしょう。
もうひとつ、ドーンと出されたアイディアが、「表現」でした。
花畑の中に立つ少女エリン――キャラデザをしてくださった後藤さんの魅力全開の、あの絵を見たとき、私は、ああ、これでもう大丈夫だ、と思いました。
あの絵の、のんびりとしたふくよかさ、絵本のような良い意味での単純さは、私の物語がもっているシビアな重さを「胸を貫く冷たい刃」ではなく、「胸をしめつける深さ」に変えてくれたからです。
子どもの頃に出会って、愛したアニメは、大人になっても、心の底に陽だまりのように輝きつづけます。そういうアニメになってくれればいいと願いながら、いまも、作業は、忙しく続いています(笑)
「20世紀の名作アニメ」ではなく、21世紀の新しい何かを秘めたこのアニメ、50回の長丁場ですが、大河ドラマを楽しむように、楽しんでいただけたらうれしいです!